日本柔道が果たすべき役割−人づくりと国際交流−
武道 2002−01
東海大学教授 山下泰裕
社団法人全日本学生柔道連盟創立50周年記念第14回教養講座が10月5日、東京千代田区の東海大学校友会館で開かれた。
今回は「日本の課題」をテーマに、全日本柔道連盟男子強化部長の山下泰裕氏が、現在の日本の教育について、また、21世紀の柔道が果 たすべき役割について講演を行った。その内容の要旨を紹介する。
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現在の教育の問題点
現在、私は教育改革国民会議の委員を務めさせていただいております。この会議が発足する際、当時の小渕恵三首相から教育改革についての意見を求められました。その中で、私が申し上げたことについてお話しさせていただきます。
日本は戦争で敗れ、極貧の状態から、わずかの期間で復興を果たしました。国民は豊かな生活を願い、便利さ、快適さを求めてきました。その中で、物や金を崇拝し、物や金がすべてだという考え方になっていったのではないでしょうか。結果 として、それが現在の社会のモラル低下につながっていったのではないかと思っています。
教育問題を考えるとき、私が一番抵抗を感じますのは、子供に責任がある、と大人が自分を棚に上げて子供のせいにすることです。私は、いまの世の中の価値観に問題の根本があるとあると思っています。現代の価値観が歪んでいて、その歪みが、いまの子供にあらわれてきているのではないでしょうか。学校教育、家庭教育など、すべての問題は、いまの世の中の価値観にあると私は思います。
教育改革というのは、我々大人一人ひとりの生き方、あり方が問われているのだと思います。
私は、物事を割り切って考えるタイプの人間です。学問は勉強しなければ、身につかないと思いますが、人間性やモラルというものは、大人である我々が自分の良心に恥じない行動をしていく中で、自然とその姿を見て子供は育っていくのではないかと思います。
現在の教育の一番の問題点は、我々大人がいかに生きるか、しっかりした価値観、思想を子供たちに教えていない、ということにあるのではないでしょうか。生きるとはどういうことなのか。学ぶとは、人生とは、幸せとは、人間とは・・・・・。こういうことを全く考えないで生活してきたこと、ここに戦後教育の最大の欠点があるのではないか、と強く思います。
大人が今を楽しく生きるために、自然環境の破壊や生活環境、財政悪化の問題などで、子供たちの将来に大きな負担をかけていいのだろうか、という疑問があります。自分たちだけが楽しく過ごして、50年後、100年後に子供たちが人間らしい生活ができなくなる状況を作っていっていいのだろうか。今を少し我慢しても、次の世代が少しでもよくなるように、人間らしく生活ができるような環境にしていく、それが大人の務めではないでしょうか。
我々の基本的な価値観、思想をもっと高めていかなければいけないと思います。そのためにわれわれはもっと勉強していかなければなりません。
すばらしかった日本の教育
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