悠 2002年新時代の校長像
尾木直樹の「第13回 教育を語りませんか」‐「人間力と社会力」 眠った日本人の心を呼び覚ます教育を
 
人生、本番はこれからだ



■尾木:山下さんにとって柔道とは一言でいうとどんなものなのですか。

山下WAY OF LIFEですね。柔道をとおしてぼくは学校の授業では学べない、しかし人生にとっては非常に大切なことを学んできた気がしますね。これは柔道そのものでもあるし、指導者、恩師からでもあるし、仲間からでもあります。

尾木本やホームページを拝見しましたが、山下さんはどこに行かれても人に恵まれているように感じます。たしかに先生や仲間、そして指導者になられてからは学生たちにも恵まれていらっしゃいますね。  

山下生意気に聞こえるかもしれませんが、恵まれるということは素晴らしいことだと思います。ただそのためには恵まれていることを自覚して、感謝の気持ちをもつことが非常に大切だと思います。当たり前だと思うと、逆にマイナス方向に作用してくるように思うんですね。「こういう人がいるからぼくがあるんだ。支えてくれるからがんばれるんだ」と、日々の行動の中に感謝の気持ちが入っていくと、いろいろなことがうまく回って、アクシデントやトラブルに対しても、自分に何かを教えるために起きているのではないかと思えるような気がするんです。

尾木ホームページではご自分の考えをありのままに語っていらっしゃって、とても新鮮でした。

山下ぼくは自分が目指し、目標にしたことが、ほかの人を悲しませるのでなく、多くの人にとっても喜びになるようなことをしたいと思っています。顔は知らなくても、同じような世の中を目指している人はみんな仲間だという思いがあるんです。ですから自分をさらけ出すことで、不特定多数の人と手をつないで、日本がよくなって、子どもたちに生き生きとした笑顔が戻って、世界から信頼されるようになって、地球上に人類がずっと何万年も生きていける、そのために力を合わせて生きていくような仲間をつくっていきたいんです。また、私は他の人よりも影響力があるわけですよね。価値観がゆがんでいたり間違っていたら、私がだめだというだけではすまない。ですから、反対意見に対してもどん欲なんです。その議論にしても、勝った負けたではなくて、そういう視点も大事なんだなと思ったときに一つ自分が広がり、向上していくと思っています。

尾木山下さんは、これまでの人生や柔道をとおして、人との信頼関係を大事にしているなと感じます。例えば、ご自分のお部屋にオリンピックの賞状ではなく、小学校時代の同級生から贈られた表彰状だけを飾っておられるということですが、それを知って非常に感動しました。

山下価値観の問題なんですね。他の人から見てどうかではなく、ぼくにとって一番大事なものをぼくは飾っているわけです。過去の栄光に浸ったり、飾ったりするのは好きじゃあないんです。ぼくの机の前に障害のある方が口で筆をくわえて描いた一枚の油絵があるんですが、自己嫌悪に陥ったときや自信をなくしたとき、その絵を見るとエネルギーが湧いてくるんです。高学校時代の友達からの表彰状は、かつての仲間が今の自分を励ましてくれているわけです。大事なのは過去じゃあなくて、今なんですよ。

尾木過去にとらわれず常に前向きに進んでいこうということなんですね。

山下ええ、今四四歳ですが、人生の本番はこれからだと思っています。今までのことは本番に向けた助走に過ぎないという気持ちなんです。過去のことは忘れても、潜在意識の中に入っていて、自分が大事な判断・決断を下す場合は必ず生きてきますよ。ただ、今とこれからのことを常に頭の中に入れていきたいと考えています。


  責任の重さを感じ、自分を変えてきた





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