講演録 / 新聞・雑誌クリッピング

2006年05月29日
すべては「挑戦する心」から

東海大学新聞 Sports Eys コーナー

柔道の国際的普及や振興、文化交流や青少年の育成などを行うNPO法人「柔道教育ソリダリティ」をこの4月1日に立ち上げた山下泰裕教授。柔道を通じた国 際交流や北京五輪に向けて復活を期す井上康生選手(東海大学大学院・綜合警備保障)への思いなどから常に前向きに挑戦を続けることの大切さを聞いた。

「かつて松前重義前絵長から『柔道、友情、平和』という言葉を贈られた。柔道を通して互いを理解し合い、友情を深め、やがてそれが平和へとつながっていくのだ、と」

山下教授は、これまでにも多くの人の協力を得ながら様々な活動を行ってきたが、組織として取り組むことで、さらに充実した活動ができると語る。全日本柔道 連盟や大学と連携し、リサイクル柔道着の途上国への無料配布や指導者の海外派遣などを行っていくという。

今年から中国の男子代表チームを支援するのも、前総長が唱えた国際交流の考えを受け継いでのこと。しかし、いくら交流とは言え、他国代表チームの強化にま で手を貸す必要性が果たしてあるのだろうか。そんな見方に対し、山下教授はきっぱりと「自分たちのことばかり考えていてはいけない」と言い切る。

「お互いに信頼関係を築くということは、それがあとで自分たちに返ってくる。だから今回も中国柔道の支援が主ではなく、もっと中国と協力し合っていきたいというメッセージを送ることに意味がある」

極東の島国という環境にいるからこそ、私たちは常に世界へと目を向けていなければならないのだ。

復活期す井上選手挑む姿勢を感じた
さて、国際交流の場という意味でも、2年後に開催を控えた北京五輪への注目はますます高まるばかり。その大舞台での活躍を柔道界からはもとより、多くのファンから期待されているのが井上康生選手である。

連覇がかかった一昨年のアテネ五輪でまさかの4回戦敗退。その後、嘉納杯で涙の復活優勝を遂げたものの、右大胸筋腱断裂という代償はあまりに大きかった。 あれから1年3カ月。沈黙を守り続ける井上選手について、山下教授は「けがは順調に回復し、今は集中して稽古に取り組んでいる」と語る。

「あの大けがで選手として柔道を続けられないのではないかと苦しんだのは確か。でも、彼は常に前向きだった」

北京五輪でもう一度金メダルに挑戦したいという思いが、井上選手を力強く支えていたのだろう。夢や目標を持つことは、それだけで体の内面から無限のエネルギーがわいてくるものなのだ。

これは何もトップアスリートだけでなく、あらゆる人に対して言えること。山下教授は色紙にサインを求められると、必ず「挑戦」の二文字を大書する。そこに は「たとえ失放しても前を向いて頑張っていく」という信念が込められている。そして最後に、東海大学の新入生に向けて、熱いメッセージを贈ってくれた。

「新しい環境に飛び込んだときこそチャンス。楽しい未来を迎えるためにも、いま精いっぱい努力することを忘れず、何事にも挑戦する気持ちで学生生活を送ってほしい」
(小野哲史)

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