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カラー柔道衣について私の考え

 このホームページにはすでに多くの読者の方々からご意見やご質問をいただいております。本当にありがとうございます。すべての方々にご返事を出せないので心苦しく思っております。申し訳ございません。

 そのなかかからひとつ、カラー柔道衣に関してご意見をいただきましたのでご紹介します。

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 私は、柔道衣のカラー化を認めてもよいのでは、と思っています。カラーにすると柔道衣の荷物がかさばることや経費の負担がかさむことは新聞で知りましたが、観る方からは、わかりやすくよいことに思えます。
●福島県 S.K.さんからのメール
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 この件に関しましては、私も思うところがありますので、私見を述べさせていただきたいと思います。

 いわゆるカラー柔道衣というのは、ブルー柔道衣のことです。柔道の試合で、白い柔道衣同士で対戦するのではなく、一方がブルーの柔道衣を着て、白対ブルーで対戦するという方式です。

 98年から、IJF(国際柔道連盟)が主催する大会、つまりオリンピック、世界選手権、ワールドカップ、世界ジュニア選手権、ユニバーシアードではこの方式が採用されることが決まり、98年のワールドカップから白対ブルーの試合が始まっています。
 これら以外の各大陸ならびに各国の連盟が主催する大会では、この方式を導入するか否かは各連盟の判断に任されていて、私の知る限り現在欧州だけがこの方式を採用しています。それ以外の大陸では、今も白対白の対戦が行われています。

 ブルー柔道衣採用の利点は、誤審の防止、判定精度の向上、そして観客にも試合がわかりやすいということなどです。
 一方で欠点は、選手が必ず最低2着の柔道衣を持つ必要が出てくるため、発展途上国の選手などには経済的な負担が大きくなってしまうことが上げられます。また柔道の伝統という見地から反対を唱える人もいます。

 私は、この問題を、2つの視点から考えています。
 ひとつは、「ブルー柔道衣の採用で柔道の本質は変わるだろうか」という視点です。
 答えは、「変わらない」です。色を変えたら柔道でなくなるのかというと、そうしたことは全くないでしょう。時代の変化とともに色を変える必要性があるのなら、変えていかなくてはならないと思います。

 もうひとつは、「ブルー柔道衣の採用が世界の柔道の発展にプラスか、マイナスか」という視点です。
 誤審が減る、試合が観客の方々にもわかりやすくなるという点ではプラスです。
 一方で、選手の経済的な負担の問題があります。IJF(国際柔道連盟)加盟国全体の約3分の1くらいで、柔道衣1着の値段は平均的な大人の1か月の所得を上回るという現状があります。白い柔道衣だけでも大会には2着持っていく選手が多いことを考えると、ブルーが必要となれば合計3〜4着必要になってしまいます。トーナメントで勝ち進んだ息も絶え絶えの選手が、10分間の休憩の間に着替えるというのは体力的にも負担です。

 以上を考慮して、私は、この問題に結論を出すにはもう少し時間がいると思いますが、オリンピックなどトップレベルの試合では、誤審を防ぐという意味で、ブルー柔道衣のメリットは大きいと思います。しかし、少年少女の大会にまでそれを義務づけると、かえって経済的な理由から柔道ができなくなる人も出てくるため、柔道の発展にとってマイナスですから、採用すべきではないと思えます。





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